考察問題は思考力が試されるが、思考力だけではなく、知識に裏打ちされた思考力が必要とされることを肝に銘じることである。 不本意ながら無機化学は受験化学では暗記の代名詞的分野として軽視する風潮が生徒のみならず教職員の間でも多いきらいがあるが、本学はこの位置づけに異を唱えるかのごとく、単なる知識の暗記で片付く問題を徹底して避けている。多くは理論化学との結びつきを前提にした理解を求めており、社会的ないし歴史的バックグラウンドを前面に押し出したストーリー性のある出題姿勢が最たる特徴である。演算能力はここでも試されることがもっぱらであるが、単に数値を導出させるのみならず、その数値の妥当性を吟味して考察につなげていくような論理的思考力が影では試されていることを強く意識する必要がある。 遺伝法則の記述が高等学校教育課程から中学教科書へと移行したことで古典遺伝学の重要性が薄れることが一時期言われ、実際に共通一次テストにおける遺伝問題の配点比は著しく減少した。 広告費ゼロ円で、受験生および教育業界というピンポイントなターゲット層にヤマトシロアリ繁殖を知らしめた。 ※以下の表はスマートフォンの場合は横画面でのスクロールを推奨, 思考力養成の土台とはいえ、まずは数多くの問題に触れることである。 河合塾は5段回評価の最も上位の『難化』ですので、理系数学もそうでしたが、大幅な難易度上昇と見て取れます。, 各大問、ほとんどが『やや難』もしくは『難』で、【1】のみ比較的解きやすかったと分析されています。, 理系数学同様、昨年のような小問集合が消えました。 (※1)河合塾:5段階評価, 駿台&代ゼミ:3段階評価. 秋の段階の模試で6割以上の点数が見込めれば、本番では十分に合格者水準のラインに届く。 2020年度のIIの最後の遺伝の問題は、解答冊子の右頁の一面にわたる白紙の解答スペースが設けられ、かなり息の長い込み入った思考力と計算の双方の記述が求められる遺伝計算の難問であった。得点開示などから推計すると、この一題の配点がかなり大きかったとみられ、この一題の正答率の低さが生物全体の得点に大きく影響する結果となった。 難しめの題材を、「設問を通じて手とり足とりガイドしてくれる」あるいはサイクリングの自転車でいうところの「補助輪」や「滑落防止のロープや目的地のための案内板」を張りめぐらせてくれるのが東大生物であるならば、京大生物はまぎれもなく「未開拓のフロンティアを助っ人や指針無しに自らの足だけで踏破する力」を試す出題のなされ方である。 予備知識の長期記憶化を怠る言い訳として、思考力という言葉を用いることも怠惰な受験生のありふれた常套句である。 (リンク:河合塾, 駿台, 代ゼミ), 2020年度の京大理系数学は、3大予備校全て昨年比で『難化』したと判断しました。 それが理由となっているかは不明であるが、京大は2012年(大問2(a)),2013年(大問1),2014年(大問2),2015年(大問2(b)),2016年(大問1(a),(b),(c))と新課程をまたぐ年度において古典遺伝学の重厚な問題を示し合わせたかのように5年連続で出題している。不本意な高等教育課程の改訂をめぐる牽制という穿った見方をすることもできるが、それを抜きにしても京大が研究分野の歴史的意義を非常に重んじていることの現れともいえる。 近年は転写発現といった分子遺伝が出題の主流となりつつあるが、依然としてメンデル遺伝を源流とする古典遺伝学の出題も続いている。 高3に差しかかり、周りの生物選択者が考察問題に本格的に乗り出しているなかで、自分だけまともに知識さえ身についていないという遅れを感じる状況は、ただでさえ受験というストレスを抱えている受験生にとって、精神衛生的にもあまりよくない。先を見越して長期的な学習計画を立てるようにしたい。 阪大の化学も思考力を必要とする初見の題材が選ばれるため、京大化学の対策として手を出すのもよいが、さくべき時間の都合上、あくまで化学を得点源としたい受験生や高得点勝負となる医学科受験生などにしぼった場合の話である。時間に余裕があったり、化学の演習を確保したい受験生はこちらの演習を強く推薦する。 一方で、例えばシナプスからのアセチルコリン分泌が小胞単位で放出されることを扱ったテーマなどは、かなりリピート率の高いものであり、阪大では常連となっている。神経生理学や恒常性をはじめとした内分泌学や、代謝や免疫といった医学系分野の内容にかなり偏った出題が目立つ。代謝分野においては化学浸透圧説について電子伝達系を絡めて問う内容が何度も類題として形を変えながら出題されている。免疫系の内容も目立ち、医学部教官に作題が一任されやすい阪大の入試委員会の背景が垣間見える。また年度や大問ごとの難易差が激しいこともあり、時間をかけるべき設問とそうでない設問を見分ける能力がかなり問われている。 また各大問の前半に占める知識問題のバリエーションも京大以上に多彩であるため、最低ラインの得点の上積みのハードルは見かけほど厳しくはない。とはいえ東大も、総合的な学力がかなり高いレベルで要求されていることに変わりはなく、そつのないオールラウンダーと相性のいい問題セットである。 さらに同年の2(b)のヤマトシロアリの繁殖メカニズムについては農学部の松浦健二教授の「ヤマトシロアリ繁殖メカニズムの分子遺伝学的解明」が該当している。 なお、1997年度の「回折格子の明線」について扱った波の分野の大問は、日本の大学入試史上で最も難しいとされる難問である。令和に突入した今となってはかなり古い過去問ではあるが、自らの学力に自負のある生徒は解いてみるのも良いだろう。, 2007年度は180分入試が導入されて初めての年だったが、簡単な微分方程式を取り入れた高度な考察問題など、質の高い問題が出題されたため、解答時間を考慮して考えると厳しい出題であった。2008年度は2007年同様の難易度が維持されていたが、2009年度は分量も増加し、問題の質も上がったので全体的に難化したと言える。また、2009年度には2002年度以来7年ぶりとなる波動分野が出題された。いずれにせよ、どれだけ基礎をしっかりしてきたかがストレートに問われる出題となっていることは間違いない。また、2012年には相対論がでるなど、題材としては非常に難しいが問題は易しかった。 これらは各大手予備校の合格者平均点の推移より分類されており、初見の過去問演習をテスト形式で行う場合は易化年度のものからはじめるとよい。なおZ会や駿台予備校などの推計によると、2007年および2019年の試験は医学科以外の学部でも合格者に9割~満点の得点者が続出していた。とくに2007年はZ会調べの合格者平均が8割を超えているため、高得点がひしめき合うミスが許されない状況になった。このように難易度推移だけを見て、易化した年度に当たることが必ずしも受験生にとっては喜ばしい結果になるとは限らない。むしろ易化年度は上位層が満点で頭打ちになるため、化学で差をつけようと計画していた突出した化学の学力を備える受験生にとっては不運な事態となる事例が相次いだ。京都大学側としてはこうした才能をもつ受験生の取りこぼしを近年は恐れていることもあり、近年は少しずつ難化推移をさせることで高得点分布の頭打ちを回避させる方針へと舵切りしつつある。, 2007年度は180分入試が導入された最初の年だったが、その年は物理が難化したためか、設問数自体が減り、問題自体も易化したため、合格者の中には満点が続出した。この年の化学の合格目標ラインは9割程度であったと推察される。ところが2008年度では再び難化したため、合格者レベルであっても6~7割程度を確保するので精一杯であったと考えられる。2009年度は量・質とも2008年度の水準を維持した。物理が難化したため、合格目標ラインはさらに下がり、5割程度になると考えられる。理論化学(大問1,2)と有機化学(大問3,4)の二つを柱とする出題は過去十数年間ずっと変わらず一貫しており、無機化学の単純な知識暗記で解決する問題はほぼ一切出題されていない。これは詰め込み教育や丸暗記といった力技で挑もうとする受験生をすべて排除するための明確な意図をもった出題であるため、原則原理の根本的な理解を重ねて柔軟な思考回路を普段から養っておく必要がある。 要求されるトータル論述量では例年「 京大 > 阪大 > 東大 」となっている。, 冒頭で軽く述べたように、京大の生物研究はテーマが独特であるため、過去問を一読すれば作題に関わった教官の特定は他大学以上に容易である。 京大において分子遺伝の分野はあらゆる他分野と融合問題の形で問われやすいため、発生学や神経生理、恒常性、代謝などにおいても遺伝子動態と結び付けた考察ができるような柔軟な思考力の土台を普段から作っておくことが求められる。 化学に限らず、近年の京大入試は後期日程を廃止して以降、問題の難易度を上げてきているため、2020年度以降も高難易度の出題がなされる可能性は高い。 その人並み外れた行動力や決断力は研究者という枠組みを超えて、もはやメディアを巧みに活用して教育の先陣を切るエンターテイナーといっても過言ではない。 『大森徹の最強問題集159問 生物』の問題には知識問題と標準的で無理のない考察問題が一つの大問にバランスよく織り交ぜられており、収録問題のレベルは河合塾の全統記述模試のレベルと近い。大森徹執筆ということもあり、解説も初学者に寄り添っているため、考察問題に最初に触れる問題集としてはふさわしいといえる。 植物の分子レベルの刺激応答については、京大ではとくに植物ホルモン分野での貢献が大きいが、目下入試問題として植物ホルモンが本格的に出題される例はそれほど多くない。 この難化傾向は一過性のものではなく、従来の京大入試の選抜基準を満たすために意図して京都大学の入試運営委員が仕掛けたとの見立てが濃厚であると、予備校関係者は口を揃える。こと京大の入試に限っては一般的な大学入試の常識がまるで一切通用しないため、今後もその動静をめぐっては予断を許さないと某大物講師が初年度セミナーで教育業界に異例の警戒を呼び掛けた。 [学校トップ][学部・学科コース]は旺文社「大学受験パスナビ」の内容に基づいています(2020年8月時点), 情報提供もとは株式会社旺文社です。掲載内容は2020年募集要項の情報であり、内容は必ず各学校の「募集要項」などでご確認ください。学校情報に誤りがありましたら、こちらからご連絡ください。 この状況設定ではこう解く、といったような頭の凝り固まったパターン学習でしか物理を学んでこなかった受験生では問題の導入部の時点からまったく歯が立たなくなることは自明である。物理において型に当てはめようとしたり、パターン化した学習に落とし込もうとする姿勢ほど愚かな勉強法はない。それはむしろ勉強とは到底言えず、物理という学問に対して背を向ける矛盾した行いである。 各大問冒頭の知識問題の失点を最小限にとどめ、なおかつメインとなる考察問題でいかに得点を積み重ねられるかが合否を分けることとなる。すべての設問を時間内に解き終えることは事実上不可能な構成であるため、時間をかけるべき問題とそうでない問題を的確に見極める選球眼も普段から養っておく必要がある。 河合塾の全統記述模試の物理では80点以上取れているような受験生でも、京大模試の物理では20点しか取れないといったケースが珍しくないのは、そもそも自分の物理に対する取り組みが物理という学問に向けるべき姿勢と馴染んでいないがために起きているということを自覚しなければならない。単純に問題が難しかったから、という自己分析は表面的な解釈にすぎない。 考察論述は字数制限の代わりに行数制限が設けられているが、全体として東大よりも論述量は多い。 2006年度以前の理科の試験時間が150分であった時代は、今と比べて問題の分量は抑えめで、他大学と比べて出題内容は独特であるものの、ある程度堅実な勉強を重ねていれば高得点を維持することも比較的容易な出題であった。2007年度以降、理科の試験時間が3時間(180分)に拡張されてからは、年々分量の増加と難度の上昇が顕著となり、年度によっては合格者平均でさえ5割を下回る問題セットも見られるようになった。2008年度、2010年度、2017年度、2020年度は特にその傾向が強く表れており、2020年度にいたっては医学科合格者の中でさえも4割ほどしか得点できていなかったものも見られた。, 理論分野では結晶格子、化学平衡。特に化学平衡は必ず出題される。無機分野では酸化・還元、中和滴定、溶解度積、金属イオンの決定、典型・遷移元素。有機分野では有機化合物の構造決定(特に芳香族化合物)、立体異性体、天然・合成高分子化合物である。もちろん、頻出分野以外も満遍なく勉強すべきであることは言うまでもない。 多くの受験生や予備校講師は前年の反動で易化を予想していただけに、これは予想外の事態であったと関係者は漏らす。2020年度は数学、物理、化学といった理系科目が軒並み記録的な難化をしたことで、例年より合格最低点が120点以上下がる学部さえ見られた(理学部など)。2020年度はすべての理系科目が常識的な受験のレベルを超えた常軌を逸した難易度であったため、試験会場で受験生が嘔吐、失神する例がとりわけ医学科会場で相次ぎ、試験監督はその対応に追われたという異例づくしの事態へと発展した。特に二日目最後の試験時間中に嘔吐失神、失禁などが複数の試験会場で発生した。また試験終了直後に、泣き崩れる受験生で個室トイレが埋まる会場棟も見られたほどの異様ぶりである。これは決して冗談などではなく、こうした現場での生々しい声や実録は現在でもツイッター等の検索でその断片をうかがい知ることができるが、次年度以降の本学受験生にとっては決して笑い話や他人事では済まされない。やや理不尽ではあるが、ある意味で極限の緊張状態の中でも心折れることなく最後まで立ち向かう強靭な精神力もまた試されているともいえる。 なお、この2016年は京都大学敷地内の京大博物館において、2016年07月13日 ~ 2016年10月30日の三か月間にわたって「虫を知りつくす 京都大学の挑戦」というお題目のもとで大規模な催しがなされ、その特別展示に松浦健二教授全面監修のもとで生きたシロアリの巣の大規模展示がなされた。 駿台文庫の『生物新・考える問題100選』は駿台全国模試の改題作が多数収録されており、それなりにまとまりのあるリード文やデータを解釈して論述答案として仕上げる練習にうってつけである。大学過去問ではなく駿台オリジナル問題がメインであるため、他の問題集にはない質の高い考察演習の場となろう。 このためか生態学や集団遺伝学がテーマとなることは阪大では少ない。 問題形式は各大問の冒頭の問1や問2に知識問題が占めることが多いものの、私立大学のようなマニアックな知識が問われることは全くないため、この部分での失点は致命的となる。以降の問いでは論述問題が配点の大部分を占めることとなり、遺伝分野や代謝分野においては本格的な計算問題も出題される。なお、2017年度のように、空所補充や知識問題がほとんど出題されず、各大問の冒頭から最後までほぼすべてが論述問題一色となるような問題セットが組まれる年度も見られる。計算問題においては、場合によっては導出過程を含めた記述が求められることもあるが、とくに遺伝分野の計算は導入部で計算ミスなどを起こすとのちの設問も雪崩のごとく失点してしまうことにもなりかねないため、細心の注意を払って解き進めることが求められる。 また2005年度には、「相対凝固点降下度」というリード文中で定義された値を指標に、「溶媒中における分子会合度が相対凝固点降下に及ぼす効果の考察」を扱った興味深い出題がなされた。ただ最後の小問となる問4において提示すべき条件の不足から解答を導けない問題不成立(問4のみ廃問)が発生し、京大入試に残した汚点としてこの問題は話題にのぼりがちである。しかし、この大問における問1~問3までの小問はよく練られた質の高い良問であり、問4以外は演習価値が高いため、考察題材として触れておくことを強く勧める。 また京大理学部において現在、ノーベル賞最有力候補者として名が挙がっている森和俊(敬称略)の一大研究テーマ「小胞体ストレス」についての出題も、いつかは満を持してなされるであろうと受験業界では囁かれ続けている。細胞生物学分野の一大メカニズムとしてアカデミックには広く受け入れられた学説であり、本学受験者は森和俊著の『細胞の中の分子生物学 最新・生命科学入門 』(ブルーバックス)を一読し、小胞体ストレスについて生物学的見聞を広めておくのもよい。 加えて、松浦教授は新型コロナウィルスの世界的蔓延を見越して、大学によるZoomの一括導入が踏み切られることに先立って、研究室の独断専行でYoutubeチャンネルをいち早く立ち上げ、シロアリや科学リテラシーについての質の高い動画を精力的に配信し続けている。 骨子となる出題は構造決定問題であるが、それに並び異性体の推定、実験計画、化合物の安定度の熱化学的考察など、根底の理解を問おうとする姿勢が随所に見られ、出題工夫もユニークである。近年は特に、立体異性体への習熟が高い水準で望まれるようになりつつあり、一昔前よりも一段とハードルは上がったと言って差し支えない。メソ体の概念が中途半端なままでの演習はむしろ遠回りであり、エナンチオマーやジアステレオマーといった考え方を平素から養っておかなければならない。さらに、糖のメトキシ化を題材にした構造推定は京大ではリピート率が極めて高く、過去問や実戦模試などで徹底してトレーニングを積むべき最重要攻略箇所である。また京大は有機構造決定と高分子分野の大問2つで、全体の配点のおよそ50%を占めるという極めて特異かつ稀有な大学であることも早期から意識しておくべきである。高校課程のカリキュラム上、有機分野の対策が直前期まで遅れることが現役生にとって致命的足枷となることを、学校で指導に当たる教職員などはくれぐれも早い段階から周知させることが望ましい。先取り学習などで夏の京大模試までには一通りの完成を見ておくことを学習計画に反映させる必要があるが、例年甘く見ている指導教員が後を絶たないのは遺憾である。 また電離平衡を始めとした平衡分野は、理論化学の集大成である。典型的な気相平衡、電離平衡などで訓練を積んだのちは、前述したような大学水準レベルの初見の平衡を噛み砕いて高校化学の水準に落とし込む頭を作り込んでおく必要がある。特に平衡は近似計算などにも習熟していないと短時間での処理も極めて厳しい。電離平衡の厳密解の推定など初見の近似計算の運用が求められる場合にも備えて、近似方法も状況に応じて様々な技があることを理解しておくことが望まれる。近似一つとってもこれが正解といって一括りにする勉強法は場面に応じた柔軟な思考を阻むリスクがあることは肝に銘じるべきである。大学初等レベルの化学を完成させている最上位層を除き、一般的な対策としては過去問演習や実戦的な演習問題で経験値を積む以外に近道はないと思われる。原理や根底を支える現象を理詰めで理解しているかどうかが試験本番での不意のひらめきが浮かぶか否かの明暗を分けることは多い。